ステンレス 板金の溶接を解説!当社の技術・製品事例もご紹介!

ステンレス製 タンク

ステンレス鋼は、その優れた耐食性、強度、そして美観から、様々な産業分野で広く利用されている材料です。板金加工においても、ステンレス鋼は頻繁に用いられますが、その加工には特有の難しさがあります。特に、溶接工程においては、ステンレス鋼の特性を理解し、適切な技術と注意点を踏まえることが、高品質な接合を実現するために不可欠です。

こちらでは、ステンレス鋼板金溶接の種類、特徴、注意点、そして高品質な溶接を実現するためのポイントについて、専門的な視点から詳しく解説していきます

ステンレス鋼板金溶接とは

板金溶接とは、切断、曲げ、プレスなどの板金加工によって成形された部品を、溶接によって接合する技術です。溶接は、金属材料を局所的に加熱・溶融し、一体化させることで接合する方法であり、板金加工においては、部品同士を強固に接合し、複雑な形状の構造物を製作するために欠かせない工程です。

 

ステンレス鋼板金溶接においては、母材であるステンレス鋼の特性を考慮した溶接方法を選択し、適切なパラメータ設定を行うことが重要です。ステンレス鋼は、熱伝導率が低く、熱膨張率が高いため、溶接時に熱ひずみが発生しやすく、割れや変形が生じやすいという特徴があります。また、耐食性を確保するためには、溶接部の酸化や不純物の混入を抑制する必要があります。

ステンレス鋼板金溶接の種類

ステンレス鋼板金溶接には、様々な溶接方法が用いられます。以下に、代表的な溶接方法とその特徴について解説します

溶接 イメージ

TIG溶接 (タングステンイナートガス溶接)

タングステン電極を用いてアークを発生させ、溶接部に溶加棒を供給して溶接する方法です。アークは不活性ガス(アルゴン、ヘリウムなど)によってシールドされ、大気中の酸素や窒素の混入を防ぎます。TIG溶接は、高精度な溶接が可能で、溶接部の品質に優れていることから、ステンレス鋼板金溶接で最も広く用いられている方法です。特に、薄板の溶接や、高い耐食性が要求される箇所の溶接に適しています。

MIG溶接 (メタルイナートガス溶接)

連続的に供給される溶接ワイヤを電極としてアークを発生させ、溶接する方法です。TIG溶接と同様に、不活性ガスによってアークをシールドします。MIG溶接は、TIG溶接に比べて溶接速度が速く、厚板の溶接に適しています。

レーザー溶接

高エネルギー密度のレーザービームを照射して、材料を溶融・凝固させることで接合する方法です。レーザー溶接は、溶接速度が速く、熱影響部が狭いため、ひずみが少なく、高精度な溶接が可能です。近年では、ファイバーレーザーの登場により、ステンレス鋼板金溶接への適用も増加しています。

抵抗溶接

電流を流して発生する抵抗熱を利用して、接合部を加熱・溶融することで接合する方法です。スポット溶接、シーム溶接などがあり、自動車の車体製造などで広く用いられています。

ステンレス鋼板金溶接のポイント

ステンレス鋼板金溶接において、高品質な接合を実現するためには、以下のポイントに注意する必要があります。

溶接材料の選定

母材の材質に合わせた溶接材料を選定することが重要です。溶接材料の化学成分が母材と異なる場合は、溶接部の耐食性や機械的強度が低下する可能性があります。

溶接条件の設定

溶接電流、電圧、溶接速度などの溶接条件を適切に設定することで、溶接部の品質を確保することができます。溶接条件が不適切な場合は、溶け込み不良、ブローホール、割れなどの欠陥が発生する可能性があります。

熱影響部の制御

 溶接時の熱によって、母材の組織や性質が変化する領域を熱影響部 (HAZ) といいます。HAZ は、母材に比べて耐食性や強度が低下する傾向があるため、HAZ の幅を小さくすることが重要です。そのためには、溶接入熱を抑制する溶接方法を選択したり、予熱や後熱処理を行うなどの対策が必要となります。

酸化皮膜の除去

ステンレス鋼の表面には、不動態皮膜と呼ばれる酸化クロムの皮膜が形成されています。この皮膜は、ステンレス鋼の耐食性を向上させる役割を果たしていますが、溶接時には溶接部の強度を低下させる原因となります。そのため、溶接前にワイヤブラシや研磨などによって酸化皮膜を除去する必要があります。

シールドガスの選定

TIG溶接やMIG溶接では、不活性ガスによってアークをシールドすることで、溶接部の酸化を防ぎます。シールドガスには、アルゴン、ヘリウムなどが用いられますが、材料や溶接方法によって最適なガス種が異なります。

溶接後の処理

 溶接後は、溶接部の外観検査、寸法検査、非破壊検査などを行い、品質を確認する必要があります。必要に応じて、バリ取り、研磨、酸洗などの後処理を行うことで、耐食性や美観を向上させることができます。

当社のステンレス板金溶接事例をご紹介

ステンレス製 排水タンク筐体 

排水タンクのステンレス製筐体は、その全溶接構造によって水漏れの可能性を大幅に削減し、結果としてメンテナンスコストの大幅な節約を実現します。さらに、この高強度設計はタンクの上にモーターを取り付けることを可能にし、これにより排水タンクは多くの機能を一つの装置で果たすことができます。

ステンレス製 熱交換用 蛇管

このステンレス製の蛇管は、特に化学・プラント業界で使用されるメッキ槽の熱交換用に設計されています。蛇管の外面は#400研磨で処理されており、これによって流体の流れがスムーズになり、また内部の付着や腐食が大幅に減少します。

5. ステンレスの板金加工は当社にお任せください!

今回はステンレス板金溶接のご紹介させていただきました。様々な用途でステンレスの板金溶接は必要になる技術です。板金部品・製缶品受託センターでは、材料調達から加工まで、一般鋼材からステンレスまで幅広く一貫対応のご提案をしております。ワンストップで対応が可能な板金部品・製缶品受託センターまでぜひお問い合わせくださいませ!