ステンレス製の板金と製缶品 – その特性と価値について解説!

ステンレス製品 イメージ

ステンレス鋼は、その優れた耐食性、強度、そして美観から、現代社会において欠かせない材料となっています。キッチン用品から医療機器、建築構造物、そして航空宇宙産業まで、その応用範囲は多岐に渡り、我々の生活のあらゆる場面で使用されています。

こちらでは、ステンレス鋼の中でも特に板金加工および製缶加工された製品について、その特性、価値、そして様々な産業分野における応用事例まで専門的な視点で解説していきます。

ステンレスとは何か?

ステンレスとは、鉄を主成分とし、クロムやニッケルなどを含む合金の一種であり、特にその耐食性が高く評価されています。酸や塩などの腐食物質に対する耐性は、ステンレスを食品・飲料関連の製品、医療環境、海洋設備など、さまざまな用途に適した素材としています。

ステンレス鋼の特性と分類

ステンレス鋼は、鉄を主成分とし、クロム、ニッケル、モリブデンなどの合金元素を添加した鋼材です。その最大の特徴は、クロムが表面に形成する不動態皮膜による優れた耐食性にあります。この不動態皮膜は、酸素と反応して形成される極めて薄い酸化クロム(Cr2O3)の層であり、鋼材内部への腐食の進行を効果的に抑制します。

ステンレス鋼は、添加される合金元素の種類や含有量、そして結晶構造によって大きく3つの種類に分類されます。

オーステナイト系ステンレス銅

 

クロム(18%以上)とニッケル(8%以上)を主要な合金元素として含む、面心立方格子構造を持つステンレス鋼です。非磁性で、優れた耐食性、加工性、溶接性を有しており、最も広く使用されている鋼種です。SUS304、SUS316などが代表的な鋼種として挙げられます。

フェライト系ステンレス銅

 

クロム(10.5~27%)を主要な合金元素として含む、体心立方格子構造を持つステンレス鋼です。磁性があり、オーステナイト系に比べて耐食性はやや劣りますが、価格が安く、良好な耐応力腐食割れ性を示します。SUS430などが代表的な鋼種です。

マルテンサイト系ステンレス銅

クロム(11.5~18%)を主要な合金元素として含む、体心立方格子構造を持つステンレス鋼です。磁性があり、熱処理によって硬化させることができます。高い強度と耐摩耗性を有しており、刃物や工具などに使用されます。SUS410、SUS420などが代表的な鋼種です。

ステンレス板金の特性

ステンレス キッチン

 

ステンレス板金は、ステンレス鋼板を切断、曲げ、プレス、溶接などの加工によって成形された製品です。その特性をご紹介します。

耐食性

ステンレス板金は、大気中や水中、酸性・アルカリ性環境など、様々な腐食環境に対して高い耐性を示します。これは、前述の不動態皮膜による効果に加え、ニッケルやモリブデンなどの添加元素によってさらに強化されます。特に、モリブデンを添加したSUS316は、塩化物イオンに対する耐食性に優れ、海水や化学プラントなど、厳しい腐食環境での使用に適しています。

高強度と耐久性

 ステンレス板金は、鉄鋼材料と比較して高い強度と耐久性を有しています。特に、マルテンサイト系ステンレス鋼は、焼入れ、焼戻しなどの熱処理によって硬度を高めることができ、引張強さ1000MPa以上を実現することも可能です。これにより、強度が要求される構造部材や機械部品に適しています。また、ステンレス板金は、耐摩耗性、耐クリープ性、耐疲労性にも優れており、長期間の使用に耐えることができます。

加工性

ステンレス板金は、塑性加工性に優れており、冷間加工、熱間加工ともに良好な加工性を示します。プレス加工、曲げ加工、深絞り加工、ロールフォーミングなど、様々な加工方法に対応しており、複雑な形状に成形することが可能です。

外観性

 ステンレス板金は、銀白色の光沢を有し、美観に優れています。また、表面処理によって様々な色や質感に仕上げることができ、デザイン性も高い点が特徴です。例えば、ヘアライン加工、バイブレーション仕上げ、鏡面仕上げなど、用途やデザインに応じて様々な表面処理が施されます。

ステンレス板金の使用例

外壁パネル
  • 建築分野: 外壁パネル、屋根材、内装材、手すり、エレベーターなど。
  • 食品産業: 食品加工機器、厨房設備、タンク、搬送ラインなど。
  • 医療分野: 医療機器、手術器具、滅菌容器、インプラントなど。
  • 輸送機器: 自動車部品、鉄道車両部品、航空機部品、船舶部品など。
  • 電子機器: スマートフォン筐体、家電製品外装など。

ステンレス製缶の特性と価値

ステンレス製缶は、ステンレス鋼板を切断、曲げ、溶接などの加工によって、箱型や円筒型などの立体的な形状に成形した製品です。その特性と価値は以下の通りです。

高い気密性・水密性

ステンレス製缶は、TIG溶接、レーザー溶接などの溶接方法によって接合されるため、高い気密性と水密性を確保することができます。この特性により、内容物を外部環境から保護し、品質を維持することができます。特に、食品や医薬品、精密機器などの保管・輸送に最適です。

耐食性・耐熱性

ステンレス板金と同様に、ステンレス製缶も優れた耐食性と耐熱性を有しています。高温環境や腐食性物質を含む環境下でも使用することができ、長期間にわたって安定した性能を発揮します。例えば、高温高圧の蒸気を使用するボイラーや、腐食性ガスを扱う化学プラントなどでも使用されています。

高強度と耐久性

ステンレス製缶は、板厚を厚くすることで高い強度と耐久性を実現することができます。大型のタンクや容器、構造物などに利用される場合、リブや補強材を設けることでさらに強度を高めることができます。また、衝撃や振動に対する耐性も高く、輸送中の破損リスクを低減することができます。

衛生的な環境への適合性

ステンレス製缶は、表面が滑らかで汚れが付きにくく、洗浄が容易であるため、衛生的な環境が求められる食品、医薬品、化学品などの保管・輸送に適しています。また、耐薬品性にも優れているため、様々な洗浄剤や殺菌剤を使用することができます。

ステンレス板金の加工事例

ステンレス製 ロールカバー

ロールカバー

このステンレス製のロールカバーは、特に独特な楕円形のロールに対応するために設計されています。通常のローラーでの曲げ加工では対応できないこの形状に対して、ブレーキ曲げを用いて小刻みに角度を調整しながら製作しています。この精密な角度調整により、楕円形のロールにぴったりと合う形状になっています。