板金加工の公差とは
板金加工の公差とは、製品の寸法に対して許容される誤差の範囲を示すものす。公差は、設計図面に記載され製品がどの程度の誤差を持っていても許容されるかを定義するものです。プラスまたはマイナスの値として示され、製品が設計要件を満たすかどうかを判断する基準となります。
たとえば、ある部品の基準寸法が10mmで、公差が±0.2mmと設定されている場合、製造プロセスにおけるこの部品の実際の寸法は9.8mmから10.2mmの範囲内である必要があります。これは、製造時に生じる可能性のある材料の変形や機械の精度のバラツキを考慮して設定されます。
また、許容差は、公差の中でも特に基準軸からの上下方向に対する誤差の範囲を指定するものです。これは、製品の機能や組み立てにおいて特定の方向の誤差がより重要である場合に使用されます。許容差は、公差内でさらに誤差の範囲を制限することにより、製品の品質を保証し、組み立てや使用時に問題が発生しないようにする役割を果たします。
公差と許容差の設定は、製品の設計と製造プロセスの初期段階で行われ、製品の品質、コスト、および製造効率に大きく影響します。
板金加工の公差における表記方法
板金加工における公差表記は、製品の品質と精度を確保するために非常に重要です。公差表記方法は主に片側公差と両側公差の2種類に分けられ、それぞれの方法が異なる制作要求とコスト効果を持ちます。
片側公差:片側公差は、特定の方向にしか誤差を許容しない表記方法です。例えば、「8.0mm +0, -0.05mm」という表記は、製作寸法が「7.95mmから8.0mm」の範囲内であることを要求しています。この方法は、機械の内向差分を考慮し、CAD修正を必要とする場合があります。これは、中心値を目標値として設定し、公差範囲内で制作することを意味します。片側公差は、設計や製造プロセスにおいて追加の調整や検証を必要とするため、コストが高くなる可能性があります。
両側公差:両側公差は、指定された基準寸法からプラスまたはマイナスの誤差を許容する表記方法です。例えば、「8.0mm ±0.1mm」という表記は、製作寸法が「7.9mmから8.1mm」の範囲内であることを要求しています。
この方法は、公差範囲内であることを確認するだけでよく、通常は片側公差よりもコスト効率が良いです。両側公差は、製造プロセスにおける柔軟性を提供し、制作の簡易化を可能にします。
これらの公差表記方法は、製品の設計要件と製造能力に応じて選択され、製品の品質とコスト効率をバランスさせる役割を果たします。どちらの公差表記方法を選択するかは、製品の性能要件、製造コスト、および製造プロセスの複雑さに依存するため、これらの要因を考慮して慎重に選択することが重要です。
板金加工における公差の種類
一般公差(普通公差):この公差は個々の寸法を一括で指定し、JISによって基準が設定されています。加工の種類や材料の大きさによって誤差の範囲が変わります。級によって異なる製品や材料に適用されます(精級、中級、粗級)。
寸法公差:寸法公差は図面で指定される特定の寸法に対して適用されます。設計者は特定の許容誤差を指定することができ、これにより一般公差よりも厳密な制御が可能になります。
幾何公差:幾何公差は形状、輪郭、姿勢、位置、同軸度、振れなどの属性に対して適用されます。これらの公差は、寸法だけでは定義できない誤差を制御するために用いられます。
はめあい公差:はめあい公差は、金属板を固定する際や、棒を穴にはめ込む際に適用されます。はめあいの種類(すきまばめ、しまりばめ、中間ばめ)によって、特定の用途や接合の強度を制御することができます。
これらの公差は、製品の設計と製造過程において、必要な精度と品質を保証しながらも、製造コストを効率的に管理するために使用されます。公差の設定は、製品の機能要件と製造能力を考慮し、適切なバランスを保つことが重要です。また、効率的な設計を行うためには、公差の種類とそれぞれの適用範囲を理解し、適切に使い分けることが必要です。
板金加工における公差の限界
曲げ加工:曲げの基準点から曲げ根元までの寸法公差はおおよそ±0.15mmが許容限界とされています。曲げ角度に関しては、約±0.5°の公差が要求されることがあります。曲げ深さが異なると、曲げ先端までの寸法公差も変わる可能性があるため注意が必要です。
レーザー加工による穴あけ:穴径に対する公差は、0~+0.05mm程度が許容限界とされています。また、穴の中心間距離においては±0.05mm程度の精度が達成可能であるとされています。
切削加工:切削加工における軸の直径の許容限界は、条件により異なるが±0.01mm程度とされています。部品の長さの寸法においては±0.03mm程度が許容限度とされています。φ10程度の材料に対しては、直径方向で±0.03mm程度の公差が一般的とされています。切削の速度や材料の硬さによって、達成可能な精度が変化することがあります。