ステンレスの使用が増え続けている現代において、その加工技術の重要性は日々高まっています。特に溶接加工は、製品の品質に直結するため、高度な技術と経験が不可欠です。このコラムでは、ステンレスの特性を踏まえた上で、溶接加工の種類と、それぞれの注意点について、当社の事例を交えて詳しく解説していきます。
1. ステンレスの特徴を紹介
ステンレスは、鉄を主成分とし、クロムを10.5%以上含む合金鋼で、特に優れた耐食性と耐熱性を持つことが特徴です。また、クロムの含有により、表面に耐食性のある酸化被膜が形成され、耐食性があります。ステンレスには、用途に応じて選定されていますが、代表的なものとしてオーステナイト系とマルテンサイト系があります。オーステナイト系(SUS304など)は、加工性と耐食性に優れ、汎用性が高く、建築材や食品機械など広範囲に使用されています。一方、マルテンサイト系(SUS410など)は高い強度と硬度を持ちますが、溶接時に割れやすい特性があるため、用途に応じた溶接方法を選定する必要があります。
2. ステンレスにおける溶接加工の種類をご紹介
ステンレスの溶接方法にはいくつかの種類があり、用途や必要な溶接品質によって適切な方法を選択する必要があります。
①被覆アーク溶接
簡易的でコストを抑えた方法ですが、手作業での溶接のため熟練した技術者によって行われる必要があります。耐久性や作業の柔軟性が求められる現場で多く使用されています。
②ティグ溶接
ステンレスの熱影響を最小限に抑えつつ、強度を確保できるため、薄板や精密部品に使用されます。装飾部材や医療機器に多用されています。
③サブマージアーク溶接
粉末状のフラックスでアークを覆いながら溶接する方法で、大型構造物や厚板の溶接で使用されます。
④レーザー溶接
熱影響が少なく、変形を抑えながら高い精度で溶接が行えるため、薄板や複雑な形状の製品の溶接に適しています。
⑤抵抗溶接
通電加熱により材料を接合する技術で、高速で行えるため量産に適した手法です。特に自動車業界で行われています。
3. ステンレスを溶接する際の注意点をご紹介
ステンレスの溶接には、いくつかの注意点があります。まず、ステンレスは熱伝導性が低く、溶接中に熱が局所に集中しやすいため、適切な温度管理が重要です。急速な冷却は、応力による割れの原因となるため、溶接後の冷却速度にも配慮が必要です。また、異なる材料を溶接する場合、材料間の電位差によって腐食が発生しやすくなるため、慎重な材料選定が求められます。
4.ステンレスの溶接加工事例をご紹介!
ステンレス製置台
化学・プラント業界向けに特別に設計された「鉄アングル」は、鋳物で成形された製品を熱処理する前に使用する台として機能します。この製品は、比較的軽量で温度も高くない製品を想定しており、そのためコストを抑えた製作が可能でした。また、溶接方法には、機械を持たない業者が多いTIG溶接ではなく、半自動溶接を採用しました。これにより、対象物の間にステンレスを挟んで溶接することで製品の強度が向上しました。
通常は鉄6-50を使用するところを、ステンレス5-50で代替することで、さらなるコスト削減を実現しています。設計プロセスにおいては、図面がなかったため、現地調査に基づいて当社でポンチ絵を作成し、それを基に製作に着手しました。
ステンレス オイルパン
こちらの事例は、自動車業界で使用されるオイルパンの事例になります。オイルパン製作にあたっての背景として、もともと使用されていたものが老朽化により使用ができなくなり早急に交換してほしいといったことでした。そこで、当社は現物を確認し早急に対応いいたしました。現地調査にて、高所にある機械に使用するオイルパンと確認ができたため、高所に固定できるよう、穴開けを実施しソケットを取り付けました。
溶接タンク
産業用タンクは、材料支給の形で加工業者に製作を依頼し、高品質な製品が提供されています。このタンクは、油漏れの防止に重点を置いて設計されており、安全性と耐久性が求められる産業用途に適しています。使用される材料はSS400で、強度と耐久性に優れた性能を発揮します。また、工程はレーザー加工と同様で、精密な加工が可能であるため、タンクの品質が一層向上しています。この産業用タンクは、信頼性と効率性を兼ね備えた優れた製品です。