アルミニウム 溶接 板金:種類と特性、そして最適な選択方法

アルミニウム合金の種類と溶接特性

アルミニウムは、その軽量性と耐食性により、さまざまな分野で広く使用されています。特に板金加工や切削加工において、その溶接特性は非常に重要です。今回は、特に板金加工にてよく使用されるアルミニウム合金の溶接特性について解説し、最適なアルミ材の選び方をご紹介します。

1.1 A5052

A5052は最も汎用的なアルミニウム合金で、曲げやすく、ある程度の耐食性を持っています。特にアルミの精密板金には最適で、溶接性も高いです。コスト重視の場合にもおススメできる合金で、特にこだわりがなければA5052の使用を検討する価値があります。曲げ加工についても使用しやすく、コストパフォーマンスに優れています。

1.2 A1050

A1050は純アルミに近く、絞りや曲げがしやすい特徴を持っています。加工性が良く、柔らかいため、構造部品のように高い強度が求められる製品には向いていません。しかし、溶接性は良好で、特に表面の酸化被膜ができやすいため、溶接時には注意が必要です。具体的には、溶接前に表面を削ったり磨くことで酸化被膜を減らすことが可能です。酸化被膜ができてしまうと、溶接がうまくいかないことがあるため、この点に注意が必要です。

1.3 A7000番台

A7000番台は軽量で強度が高いことが特徴で、構造部品などに採用されることが多いです。しかし、溶接性は他のアルミニウム合金と比較して悪く、溶接時にクラックが発生しやすいため、溶接には向いていません。したがって、A7000番台を使用する場合は溶接を避け、ねじ留めやリベット留めなどで固定するのが一般的です。また、曲げ加工も難しく、主に切削加工や鋳物加工に使用されます。

1.4 A2000番台

A2000番台はA7000番台と似た特性を持っていますが、強度はA7000番台に劣ります。理由として、A2000番台に使用される銅が、A7000番台に使用される亜鉛やマグネシウムと比較して強度が低いためです。A2000番台も溶接には向いていないため、ねじ留めやリベット留めなどで固定することが推奨されます。

 

アルミニウム溶接の難しさと対策

アルミニウムの溶接には特有の難しさがありますが、それぞれに対する適切な対策を行うことで、品質の高い溶接を実現することができます。 2.1 酸化被膜の形成 アルミニウムは非常に酸化しやすく、酸化被膜が溶接に悪影響を与えます。酸化被膜はアルミニウムの表面に自然に形成されるため、溶接前にこの被膜を除去することが重要です。通常、溶接前に酸化被膜を削ったり磨くことで対策します。 2.2 低い融点 アルミニウムは他の金属に比べて融点が低く、溶接時に意図しない形で溶けやすいという特性があります。これにより、溶接不良が発生する可能性があります。適切な温度管理と溶接技術を駆使することで、この問題を解決します。 2.3 高い熱伝導率と歪み アルミニウムは熱伝導率が高く、熱によって歪みやすい特性を持っています。このため、溶接時に均一な熱分布を保つための工夫が必要です。歪みを防ぐための治具の使用や、溶接順序の工夫などが効果的です。 2.4 溶接割れ アルミニウムは溶接割れが発生しやすい特性を持っています。これは酸化被膜に結晶水や大気中の水分を含み、溶融金属中に水素が残留しやすく、高い熱伝導率の影響で急速に冷え固まるためです。水素が過剰に含まれると、金属内に小さな空洞であるブローホールが生じ、溶接割れや溶接不良の原因となります。適切な溶接プロセスと技術を用いることで、これらの問題を防ぐことが可能です。

アルミニウム溶接の実践方法

アルミニウム溶接を成功させるためには、適切な準備と技術が欠かせません。

3.1 仮止めの実施

溶接する箇所に隙間がないよう仮止めを行います。製品サイズに合わせて仮止め箇所の数を調整し、隙間を防ぐことが重要です。

3.2 細かな仮止め

細かく仮止めを行うことで、強度を確保します。アルミニウムは溶接割れが起こりやすいため、細かな仮止めが特に重要です。

3.3 表面の不純物除去

溶接前に表面の油や不純物を徹底的に除去します。製品の取り扱いにも注意を払い、不純物が付着しないようにすることが重要です。

3.4 溶接スピードと温度の調整

溶接の始めと終わりでスピードと温度を変化させる必要があります。アルミニウムは熱伝導率が高いため、溶接開始時にはゆっくりと行い、終わりに近づくにつれて速度を上げることが推奨されます。また、温度も始めは高めに設定し、終わりにかけて低くします。