ステンレス曲げ加工の種類とその選び方:代表的な3つの加工方法を徹底解説

ステンレスは、日常生活のあらゆる場面で使用される金属で、特に住宅設備や産業機械の部品として広く活用されています。その中でも、ステンレスの曲げ加工は、製品の品質と耐久性を左右する重要な工程です。ステンレスの特性を理解し、適切な加工方法を選定することが、製品の完成度を高める鍵となります。

本記事では、ステンレスの曲げ加工における代表的な3つの方法「パーシャルベンディング」「ボトミング」「コイニング」を解説し、それぞれの特性や用途について詳しく紹介していきます。

ステンレスの曲げ加工とは

ステンレスは優れた耐食性、耐熱性、強度を持ち、その特性から多くの製品に使用されています。しかし、ステンレスは加工が難しく、特に曲げ加工には高い技術が求められます。ステンレスの曲げ加工は、プレス機械を使用して板材を希望の形に変形させる工程で、使用する金型や加工方法によって様々な形に加工が可能です。

しかし、ステンレスはスプリングバック(加工後に元の形状に戻ろうとする力)が大きいため、曲げ加工には精密な計算と技術が必要です。この特性を考慮しながら、適切な加工方法を選ぶことが重要です。

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代表的なステンレスの曲げ加工の種類

ステンレスの曲げ加工にはいくつかの方法がありますが、ここでは代表的な3つの方法「パーシャルベンディング」「ボトミング」「コイニング」を詳しく紹介します。

パーシャルベンディング(エアーベンディング)

パーシャルベンディングとは、「部分的な曲げ」を意味し、ワークが金型の3点(上金型と両側のVダイ)で接触する加工方法です。ワークと金型の底が接触せず、空気に浮いた状態で曲げを行うため、エアーベンディングとも呼ばれます。

特徴:

  • 加工の角度を自由に設定できるため、鋭角から鈍角まで様々な曲げ角度に対応できます。
  • 曲げる際の圧力が比較的小さくて済むため、金型の摩耗が少なく長持ちします。
  • 板厚の12~15倍程度のV幅が理想的とされています。

用途:

  • 曲げ角度の調整が必要な多品種少量生産や、試作段階での製品加工に最適です。
  • 比較的簡単に加工できるため、広い範囲で使用されています。

ボトミング

ボトミングは、ワークを金型の底に押し付けて曲げる「底押し」の加工方法です。この方法では、ワークが金型としっかり接触し、安定した曲げ精度が得られます。比較的小さい圧力で正確な曲げが可能なため、最も多く使用される方法です。

特徴:

  • 加圧が小さいため、高い精度の曲げ加工が可能です。
  • 曲げ後のスプリングバック(材料の反発)を考慮して、金型の角度を調整する必要があります。
  • 板厚によってダイの溝幅が変わり、板厚の6~10倍が目安とされています。

用途:

  • 高い精度が求められる製品や、反復して安定した品質が必要な加工に最適です。
  • 一般的な曲げ加工として、多くの工場で採用されています。

コイニング

コイニングは、ワークに圧力を強くかけて金型に食い込ませるように加工する方法で、名前の由来は「コインを打刻する」ことからきています。極めて正確な曲げ精度と小さな内Rが得られる反面、ボトミングに比べて5~8倍の加圧力を必要とします。

特徴:

  • 加圧力が非常に大きいため、曲げ精度が最も高く、スプリングバックがほぼ発生しません。
  • 小さな内側の曲げ半径が必要な加工や、高精度が求められる部品に適しています。

用途:

  • 極端に小さい曲げRが必要な部品や、精密な仕上がりが求められる高級製品に使用されます。
  • 高圧をかけるため、耐圧性が求められる特殊な機械が必要です。

曲げ加工の選定ポイント

曲げ加工の方法を選ぶ際には、製品の用途、必要な精度、使用する材質や板厚を考慮することが重要です。例えば、角度調整が必要な場合はパーシャルベンディング、精度が求められる場合はボトミング、非常に小さな曲げRや極めて高い精度が必要な場合はコイニングが適しています。

また、加工の難しさやコストも考慮し、どの方法が最適かを判断することが重要です。加工を依頼する際には、事前にしっかりと打ち合わせを行い、最適な加工方法を選定することが製品の品質に大きく影響します。

ステンレス曲げ加工の難しさとその対策

ステンレスは、曲げ加工中にスプリングバックや加工硬化が発生しやすい素材です。これらの問題に対しては、事前の計算と調整が不可欠です。

スプリングバックの補正:金型の角度を鋭角にしたり、加工後の調整を行うことで、スプリングバックの影響を最小限に抑えます。

加工硬化の管理:加工中に硬くなりすぎないよう、適切な加工速度や冷却を行い、割れを防ぐ工夫が必要です。