ステンレスの曲げ加工と厚み:加工方法と注意点を徹底解説

ステンレスの曲げ加工は、製品の厚みによってその難易度や加工方法が大きく変わります。ステンレスの厚みに応じた適切な加工方法を選ぶことが、製品の品質や精度を保つために非常に重要です。本コラムでは、ステンレスの曲げ加工における厚みの影響、代表的な加工方法、そしてそれぞれの注意点について詳しく解説していきます。

ステンレスの曲げ加工とは

ステンレスは優れた耐食性、耐熱性、そして強度を持つため、住宅設備から産業用機械まで広範な分野で利用されています。ステンレスの曲げ加工は、ステンレス板を特定の形に変化させるための工程で、使用する金型やプレス機械によって様々な形に加工できます。しかし、ステンレスはスプリングバック(加工後に元の形状に戻ろうとする力)が大きく、加工が難しい素材でもあります。

ステンレスの曲げ加工において、板の厚みは加工の難易度に大きな影響を与えます。厚みの違いによって加工方法や注意すべきポイントが変わるため、厚みに応じた適切な手法の選定が重要です。

熱膨張と収縮

厚みによるステンレスの曲げ加工の難しさ

薄板の曲げ加工
薄いステンレス板(0.5~2.0mm程度)の曲げ加工では、板が割れやすく、曲がり過ぎるリスクがあります。薄板の加工は、曲げ半径が小さいため、材料が急激に変形しやすく、加工精度の維持が難しいのが特徴です。また、加工時にスプリングバックの影響が大きくなることもあるため、細かい調整が求められます。

中厚板の曲げ加工
中程度の厚み(2.0~6.0mm程度)のステンレス板では、比較的安定した加工が可能です。中厚板は薄板に比べて割れにくく、厚板に比べて必要な加圧力も少ないため、汎用的な加工方法で対応できます。しかし、板厚に応じた適切な金型選定と加圧力の調整が必要で、スプリングバックを考慮した曲げ角度の微調整も必要です。

厚板の曲げ加工
厚いステンレス板(6.0mm以上)は、曲げ加工が特に難しいとされています。大きな加圧力が必要であり、加工機械や金型に高い負荷がかかるため、機械の選定が重要です。また、スプリングバックの影響も大きく、加工後の形状がずれるリスクが高くなるため、事前の計算と調整が不可欠です。

 

ステンレスの厚みに応じた代表的な曲げ加工の方法

パーシャルベンディング(エアーベンディング)

パーシャルベンディングは、薄板や中厚板の加工に適した方法で、曲げ角度を自由に設定できるのが特徴です。ワークが金型の底に接触せず、3点で支えられて曲げられるため、スプリングバックが発生しやすいですが、調整の自由度が高く多様な形状に対応可能です。

ボトミング

ボトミングは、ワークを金型の底に押し付けて曲げる加工方法で、中厚板の加工に最適です。スプリングバックを考慮して金型の角度を調整する必要がありますが、比較的高い精度が得られるのが特徴です。適切な加圧力を保ちながら安定した加工ができるため、多くの工場で使用されています。

コイニング

コイニングは、厚板や高精度な加工が必要な場合に使用される加工方法で、ワークに強い圧力をかけて金型に食い込ませます。この方法ではスプリングバックがほとんど発生せず、極めて正確な仕上がりが得られますが、必要な加圧力が非常に大きいため、機械や金型に高い耐圧性が求められます。

厚みに応じた曲げ加工の注意点と対策

薄板の注意点

・割れ防止:曲げ半径を大きめに設定し、割れが発生しにくい条件で加工を行います。

・スプリングバックの予測と補正:スプリングバックの大きさを事前に計算し、金型や加工角度を調整します。

・加工速度の管理:急速な変形を避け、ゆっくりとした加工速度で精度を高めます。

中厚板の注意点

・適切な金型選び:板厚に応じたV溝の幅を選定し、曲げ角度の調整を行います。

・角度調整:スプリングバックを考慮し、角度を微調整して正確な仕上がりを目指します。

・機械の選定:中程度の加圧力を保てる機械を使用し、加工の安定性を確保します。

厚板の注意点

・高加圧力に対応する機械の選定:高い加圧力をかけるため、機械の能力を超えないように注意が必要です。

・スプリングバックの補正:計算に基づいた金型の調整や加工後の微調整が重要です。

・材料の性質に応じた事前の計算:材料特性を考慮して、加工中の変形を予測し対策を講じます。