板金の曲げ加工を徹底解説いたします!

曲げ加工による立ち上がりの限界値について

曲げ加工のプロセスは、上部と下部の二つの金型を利用して金属板を曲げる方法です。このプロセスでは上の型(ヤゲン)と下の型(ダイ)の間に金属板を挟んで曲げます。ダイの金型には溝があり、金属板の厚さに応じて溝の幅が異なります。通常、ダイは〇Vという形式で呼ばれ、この数字は溝の幅を示します(例:12Vは溝の幅が12mm)。

 

曲げ加工時には、適切な溝幅のダイを選択することが重要であり、狭いダイを使用すると、金属板に反りや曲げ傷が発生する可能性があります。また、金属板の完成形状によっては金型に干渉して加工できない形状があるため、曲げ加工可能な範囲(限界値)は設計内容や加工メーカーによって異なる場合があります。

 

ヤゲンの断面形状シートとリターンベンドの限界グラフを利用することで、曲げ加工が可能か、または通常の型で曲げることができるかを確認できます。ヤゲンの形状シートは実物の金型と同じ形状を持ち、原寸大の形状見本や模型を使用して干渉の有無を確認できます。リターンベンドの限界グラフは、ヤゲン(金型)の寸法や形状を図示し、板金加工の完成寸法と比較して加工可否を確認します。

 

曲げの限界高さ寸法は、曲げが可能でありながら、ワークの反りや傷が発生しない範囲を示します。これを最小フランジとも呼ぶことがあります。

 

板厚と限界ダイ溝幅の関係は、以下の式で示すことができるようです:

\[ 4 \times t = 限界ダイ溝幅 \](90°曲げの加工時, \( t \)は金属板の板厚)

 

曲げ加工の最小高さは、限界ダイ溝幅に加えて溝幅の半分の値と補正値を考慮する必要があり、その式は以下のように表されます:

\[ 立ち上がりの限界値 = 2t(限界ダイ溝幅4t \times ½ (溝幅の半分)) + 補正値 \]

 

これらの限界値は一例であり、詳細はメーカーに確認することが重要です。

板金の穴と曲げ加工の関係性について

曲げ加工は板金の穴の形状に影響を与えることがあり、これは曲げ時に板材に働く圧縮力と引張力の結果です。穴の変形は、曲げ部と穴の間の距離によって異なり、この距離が短いほど変形が大きくなる可能性があります。

穴の変形は主に中心方向に膨らむ形で現れ、これによりシャフトやネジの挿入に問題が生じたり、部品間の干渉やガタつきが発生する可能性があります。この問題を解決するためには、穴と曲げ部との間に十分な距離を確保するか、または曲げ工程前に逃げの穴を設けることが考慮されます。

量産フェーズに入っている場合、後工程での対応が必要となる可能性があります。これを避けるためには、試作や開発フェーズで穴の変形を予測し、設計段階で穴と曲げ部の距離や、必要に応じて逃げやぬすみを考慮することが重要です。

穴位置と曲げ位置の適切な距離を確保することは、組み立て時の問題を避け、効率的な製造プロセスを実現するために重要な考慮事項となります。これらの注意点と解決策を理解し、適切に適用することで、曲げ加工後の製品組み立てにおける問題を最小限に抑えることができます。

断面と穴の距離に関する限界について

曲げ加工における穴の変形は、板材に発生する力によるもので、これは曲げ部の近くに穴が存在するときに特に顕著になります。穴の変形を避けるためには、設計段階で曲げ部から穴までの距離を適切に確保することが推奨されています。その目安として、以下の式が示されていますが、これは基本的な指針であり、実際の設計においてはさまざまな要因を考慮する必要があります。

\[ f (穴の端から曲げの内側の距離) = 板厚 × 1.5 + r (曲げの内 R) \]

穴の設計においては、材質やタップ(雌ネジの穴加工)、そして設計における公差なども重要な要因となります。安全マージンを確保することが推奨されています。

さらに、金型の条件や加工形状によっては、板材の表面が丸くなる「ダレ」や、端部にギザギザとした形状の「カエリ」が発生する可能性があります。これらの変形は、穴の寸法や形状に影響を与える可能性があり、組み立て時に問題を引き起こす可能性があります。

加工条件は金型の形状や摩耗状況、そして加工形状によって変化します。したがって、板金の加工特性を理解し、各メーカーの加工可能な限界値や製造条件を確認することが、適切な設計と加工のために重要となります。これらの知識を利用することで、曲げ加工に伴う潜在的な問題を予測し、適切な対処を行うことが可能となります。